入江の自然保護活動家訪問

    史跡・ネイチャー

    蟹蔵の環境保全活動


     宮古島のプライベートガイドで訪問する蟹漁師で食・学・体験ツアーを提供している蟹蔵(かにぞう)の吉浜崇浩さんが続けている入江の環境保全活動を紹介します。
     宮古島の海岸線には、伏流水の湧出によってサンゴ礁が発達しなかったか、あるいは石灰岩(サンゴの堆積層)が溶けてなくなってできた入江があります。海水と淡水が混じり合う汽水域には、潮に強い植物が群生したマングローブの独特の景観が作られます。
     緑に囲まれ、木漏れ日が水面に反射して輝くなかを、パシャパシャと水音をたてて分け入る散策は、素直に心地良いです。昔の姿を知らない僕らにとっては……。

     一度は島を出た吉浜さんは、5年ぶりに伊良部島に帰ってきたときに、子どものころから知っていた風景が失われていることに衝撃を受けました。
     以前から農地の拡大や建築物の増加によって、入江の埋め立てや掘削が進んでいましたが、問題は周辺の自然林の消失に留まらず、土砂の流出や潮の流れの変化によって、『生命のゆりかご』としての入江の機能が失われてきていることでした。
     空港職員として働いていた吉浜さんは、周囲の理解が得られないなかで、安定した職を手放します。

     そして、『マングローブの王様』と呼ばれる網目ノコギリガザミの蟹漁師として、入江の環境を取戻す取組を始めました。
     吉浜さんは「入江の役割や環境開発が及ぼす影響について理解すれば、人の考えや行動が自然に変わるはず」と話します。
     信念を持って粛々と行動を続けてきた吉浜さんの説得力は、かつて脅迫めいた妨害行為をしていた方が、いつの間にか支援者になってしまったほど。今ではメディアからひっぱりだこの人気で、リピートのお客さんも多いようです。

     入江を散策したあとに、美しいビーチを目前にいただく美味しい蟹料理もありますが、1回の訪問では知り尽くせない入江と吉浜さんの魅力が溢れているからだと思います。
     入江の環境保護について知ってもらうために(話題性もあり仕事として成立する)蟹漁を始めたという蟹蔵の吉浜さんは、もし入江にワニがいてそれが話題を集めるのなら『僕はワニ蔵でも良かった』というから、愛嬌たっぷりです。

     入江は6時間ごとに潮の干満が起こります。エビや蟹、小さな魚にとって流れの穏やかな浅瀬は、プランクトンが豊富で快適な環境です。そこには多様な生物が生息しています。

     干潮時には、プランクトンが近海に流れ出し、サンゴ礁を育てます。また珊瑚は小さな魚にとって、貴重な餌場や隠れ場所にもなっています。
     満潮時には、大型魚が外洋から入江に入ってきて産卵をします。稚魚は大型魚に捕食されるリスクも少なく、潮の流れが穏やかな環境で育ち、成魚になって外洋デビューを果たします。

     入江には独自の進化を遂げたマングローブと呼ばれる植物群が生育しています。それらは海水が混ざった水を吸い上げ、満潮時には根が海水に水没するなど、一般的な陸生植物とは異なる環境で育ちます。
     『ヤエヤマヒルギ』は、幹や枝から支柱根を伸ばし、杖をつくような型形で自分の体を支ます。『オヒルギ』、『ヒルギダマシ』は、水没する環境で根の酸素不足を解消するために、呼吸根を地面に出します。それはまるで「三角座りした膝」や「筍の株」のように、地上にポコポコと生えている状態です。

     これらの植物は、根から吸い上げた海水の塩分を一旦葉っぱに溜め込みます。そして、落葉を通して塩分を放出します。落葉した黄色い葉っぱをかじってみると、確かにほのかにしょっぱいです。そして、これらヒルギ科の植物の種は、コルク質で水に浮いて漂流します。漂着した場所で環境がよければ発芽します。まるで海を渡って海外に遠征するような性質で繁殖能力が高いです。

    訪問先ショートムービー

    体験スポット名入江の自然保護活動家訪問
    滞在時間80分
    備考・注意点入江は泥地のため、汚れても良い服装でご参加ください。

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